しんがりのいえ
2008年に竣工した万年山文庫。ご主人の定年退職を機に京都から徳島に戻られるということで、たくさんお持ちだった本(最初にお邪魔したマンション、本だらけだったなあ)のための文庫と、それを読書好きな方々に静かに楽しんでいただく喫茶店と談話室、そしてもちろんすまいを、眉山の麓、蜂須賀家墓所のある万年山に設計させていただきました。1階に文庫、階段を上がって2階に茶房。すまいは各階に黒子的に接して配置され、生活空間は主に2階です。眉山の四季を楽しむ豊かな場所ができました。文庫あるじ(奥さん)のお父さんはパリでイサムノグチの助手もされていた造園家で、文庫には庭の写真本がたくさん、お客さんを店へ導く感じのいい露地も父さんの監修によるものでした。
口伝えに噂が広まり、たくさんのファンの方が訪れる徳島の隠れた名所になっていましたが、ご両親との暮らしの中でお客さんをお迎えするのがだんだん難しくなって休業状態が続き、残念ながら3年半前に閉店してしまいました。これはある意味想定されていたことで、徳島に居を移したのもまさにそのためでした。が、予想していなかった事態がひとつ。文庫あるじの膝痛です。高齢なお母さんもお気に入りのゆるやかな螺旋階段もだんだんつらくなって・・・。今回、想定より少し早めに暮らしの中心を1階におろすことになりました。そうこうするうちに、琵琶湖湖畔でのどかに住まわれていたあるじのお姉さんのほうでも、老後はやはり知り合いの多い徳島に戻ろうかなあ~という話も持ち上がります。
万年山文庫の増改築とお姉さんのすまい。ではみんなで一緒に考えていきましょうかとなったごく初期に、このいわばともぐらしの家々の名前がまず決まりました。「しんがりのいえ」。高齢になってから構える家を「終の棲家」とはよく言いますが、それで終わる、とは考えない。誰かが住み継いでくれることもイメージしたいし、終わりに見えて実は次の始まりかもしれない。この家族の最後尾にいるけど、次に渡すことや、未来を考えてつくりましょう。ということで、「しんがりのいえ」です。
街中で、田舎で、都会で、どのように自分のくらしを仕舞っていくのか。我々みんなが必ず直面する最後の難題を、積極的に楽しんでいきたい。その過程もオープンにして、つぎのしんがりをいく人の助けになれば。思い起こせば万年山文庫の設計の間、あるじが「只今準備中」というブログを本当に楽しそうに(笑)書かれてましたが、今回は内野設計の方でも「しんがりのいえ」のレポートを公開して、多くの方々と共有したいし、できたら助言も頂けたらええなあと思ってます。
まあ長い文章ですが、一回目はこれくらい書かんとなんのことやらわからんよなあと思たけん笑。ではでは、はじまります~
オープニング投稿には何となくこの写真が似合う気がする笑
万年山文庫、竣工当時の写真はこちらから→内野設計HP